「あびこエコ畑めぐり」ツアー

我孫子の新規就農者や自然農の畑などを見学するバスツアー「あびこエコ畑めぐり」を開催、約26名が参加。①相馬伸年さんの畑、②玉根康久さんの畑、③NPO法人手賀沼トラストの養蜂施設、④中野栄さんの田んぼと精米施設・加工品工場、⑤わが家のやおやさん 風の色(今村直美さん・細渕有里さん)の畑を見学後、湖北台の洋風レストラン「ブラッスリー・ル・ポワロー」で地元野菜を使った料理を頂きました。

① 相馬伸年さんの畑

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相馬さんは一昨年に就農。十数年間の耕作放棄地であったため、就農した当初は繁茂するブタクサ等の雑木を刈払機で刈ったり、葛の根を手で掘り起こしたりする作業に追われ、少しずつ今の形を作ってきました。今でも、少し放置すると元に戻ってしまうのでは、という危機感で気が抜けません。
 最初は農作業の道具も機械もほとんどなく、半年前にトラクターを購入するまでは小さい耕運機を使っていました。作業小屋もまだないので、収穫した作物は車の荷台を作業台がわりに調整・袋詰めなどを行ない、すぐに出荷するようにしています。この土地の地質に合った作物を探すため、人参・枝豆・春菊・わさび菜・白菜・大根・サラダほうれん草・ブロッコリー・里芋・長芋などいろいろな作物を栽培。特に人参や里芋の出来が良いようです。
 利根川の遊水地なので、河川が氾濫する危険がある場合は越流堤から水が流入します。今年9月の大雨の際には冠水は免れましたが、傾斜の低いエリアは水没し、排水ポンプを使って水抜きをしました。また、大雨が降ると乾きにくく、数m掘ると水が出る、と言われるほど水気の多い土地です。風も強く、北風が強い時は立っていても煽られそうになり作業にならないことも。でも、この畑の開放感がとても気に入っているので、これからもここで頑張りたいと考えています。

② 玉根康久さんの畑

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玉根さんは祖父母の代に開拓した土地で、ずっと農業を営み、無農薬で野菜を栽培。遊水地の中に畑があり、土が肥え、土づくりをするというより、土地に合った作物を栽培し施肥はあまりしない。しかし、一度冠水すると、殆どの作物がダメになってしまいます。十数年前までは何度か冠水したが、地盤沈下対策が行われ、その後は冠水しにくくなりました。
 大根、人参、玉葱、牛蒡など、様々な野菜を栽培し、学校給食にも提供。現在、春に蒔いた秋冬採り牛蒡を収穫中。牛蒡を掘る時は土を深さ90㎝程まで掘ります。機械で掘ることもあり、手で掘る場合は牛蒡が長くない方が作業は楽。玉根さんの畑では太い品種の牛蒡は直売所に出荷。逆に、学校給食などでは細い方が調理しやすいようです。
 畑は風が強いため、作物の生育は遅めですが、風よけや緑肥用として麦を植え,又、作物を荒らすハクビシンやタヌキとの知恵比べでもあります。

③ NPO法人手賀沼トラストの養蜂施設 (話し手:富澤崇さん)

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NPO法人「手賀沼トラスト」は、根戸地域周辺の樹林地や農地、史跡などを保全する任意団体として1999年に設立。現在は、根戸城址の保全、手賀沼周辺の斜面樹林地の保全、遊休農地を活用しての米づくり、花ハスやヒマワリなどの景観植物の栽培、有機(生態系)栽培による冬水田んぼでの生きものと共生する米づくり、畑地での蕎麦や季節の野菜づくりなどの農業体験活動等を行っています。
 養蜂部会、果樹部会、ハーブ部会、野菜ソムリエ部会などがあり、「養蜂部会」では野生のニホンミツバチを飼育。ミツバチが春先に分蜂して、巣箱近くに集結した際に、群を捕獲し、用意した巣箱に収納します。しかし、ミツバチは大変気難しく、巣が気に入らなければ出て行ってしまうこともあり,また、ミツバチの大敵であるスズメバチの駆除作業や撃退トラップの作成や設置作業等も行います。蜂蜜も採りますが、蜂蜜は蜂が冬や長雨で蜜を取りに行けない時のための栄養源なので、少しだけ採蜜し、蜜蝋とホホバオイルを混ぜた蜜蝋クリーム等を作っています。

④ 中野栄さんの田んぼと精米施設、加工品工場

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中野さんは、総面積約40町歩(東京ドーム8、9個分)の田んぼで米を栽培し、精米施設で精米して出荷するほか、加工品工場で餅やシフォンケーキなどに加工したりしています。米の種類は、飼料米が3種類、食用米が3^4種類。食用米はコシヒカリ、アキタワラ、ミツヒカリ、マンゲツモチなど。田んぼの作業は殆ど全て機械で行い人手はあまり必要なく、田植えと稲刈りは5^6人、生育期間の管理は2人で行う。収穫した米は、乾燥させ、籾摺りした後、米選機で粒を選り分け、色彩選別機で黒色米(カメムシ等の食害が原因)や乳白米(高温障害等が原因)等の着色米を除く。精米した時の歩留まりが下がらないように、機械にかけた後に玄米で出荷。出荷先はJAや集荷業者等。また、直売所に納品する米や、卸売販売業者を経由して大手レストランチェーンに納品する米もあります。

⑤ わが家のやおやさん 風の色(今村直美さん・細渕有里さん)の畑

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今村さんと細渕さんは、約6年前に農園「わが家のやおやさん 風の色」を始め、3年前にビニールハウスを建て(その際には援農ボランティアも活躍)、去年は井戸を掘りました。畑は高台にあり、何日も雨が降らないと水不足になり、井戸を掘るまでは夏の暑さで作物が日干しになるのを防ぐのが大変。
 農園「わが家のやおやさん 風の色」では、地域の農業と地元の人々が支え合うCSA(Community Supported Agriculture:地域支援型農業)という考え方を取り入れた農業に取り組む。賛同して頂いたお客様と年間契約を結び、市況等に左右されず作物栽培に専念でき、周年の栽培計画が立てやすくなり、廃棄ロスを減らすことができます。
 現在は聖護院大根、ターツァイ、壬生菜、赤からし菜などを収穫。宅配箱にできるだけ多くの種類の野菜を入れるため、小さめの品種を選んで栽培。宅配箱には、お客様から寄せられたレシピや畑の現在の様子などを書いた手紙も一緒に入れます。宅配サービス以外に、我孫子駅北口のアビーズファームで販売し、柏のレストランにも卸し、レストランからは、(それまで間引いていたような)小さな蕪が欲しいなど、要望が一般家庭と少し異なるため非常に勉強になります。

バスツアーを振り返って 

今回のバスツアーでは、我孫子の農業を支える方々を訪問し、生き生きと活動される姿を拝見できた。規模や形態は様々ですが、どの方も個性に溢れ、ご自分の耕作地と真剣に向き合いながら自信を持って農業を営んでおられ大変感銘を受けました。バスツアーの最後に湖北台にある洋風レストラン「ブラッスリー・ル・ポワロー」で我孫子の野菜をたっぷり使ったお料理(葉野菜や根菜のトマトソース和え、じゃが芋と玉葱のスペイン風オムレツ、大根とじゃが芋を使ったピザ、野菜のグラタンなど)を頂く。我孫子の野菜の魅力を再確認し、我孫子の農業を支える様々な方々にあらためて感謝した一日となりました。